※2000年代半ば ニューヨーク駐在時取材記事なので現在は大きく変化していると思います。その点ご理解ください。

NYの最新スポットとして日本でも有名なミートパッキング・ディストリクト(Meatpacking District:MPDと略します)、トレンディなブティックや有名人が集うレストランなどが目白押しと聞き、取材に行ってきました。
MPDはマンハッタンの西南部分、9thアベニューの西側、14thストリートの南に数区画にわたって広がっています。この地域はもともと多くの精肉工場が集まり、マンハッタンにありながら開発が遅れていた地域でした。ここに数年前から古い倉庫のような建物の外観を利用して、先進的なブティックやクラブそしてレストラン等が立ち並び、流行に敏感な人たちの集まる地域となりました。特に目を引くのは舗装のされていない古い石畳の町並み。通りをはさんで並ぶ建物も2、3階建ての低い建物が多く、軒を連ねる有名レストランのオープンエアのテラス席には客が鈴なりで、ヨーロッパの町にでも来たようなちょっとした異国情緒を味わえます。10thアベニューまで行くと最早場末の雰囲気で、今も稼動しているに違いない精肉工場があったり、見上げると道路の上には「ハイライン」という昔の高架鉄道の跡があったりと、最新のものから廃墟までが交じり合ってマンハッタンでも独特の雰囲気を醸し出しています。
MPDの週末ピーク時間は夜中の12時過ぎとも言われています。さすがトレンディースポットと言うべきか、夜も更けてきたころには華やかに着飾った女性の姿も多く、ストレッチャーリムジンが行きかってちょっと非日常な姿をみせてくれます。そんな中でレストラン、バーなどを何軒か試してみました。
おせっかいですが、日本のガイドブックなどでは通称「ミートマーケット」と呼ばれますが、アメリカではスラングでちょっとアヤシイ意味(ストリップ小屋という意味)があるので、正式名称で話すのが無難かと思います。
SPICE MARKET(スパイス・マーケット)
403 West 13th St., Tel: (212) 675-2322 (9th Ave. between 13 & 14 St.)
日本の女性誌フィガロのNY特集・レストランの部でトップに紹介されている、MPDの象徴的なレストラン。有名シェフ、ジャン・ジョルジュが手がけたベトナム料理を基本としたアジアン・フュージョン料理の店です。ここには遅い昼食で入ったのですが残念ながら印象は今ひとつでした。なによりサービスがちょっとおろそかで、人手が足りていないのか注文は取りに来ない、料理は出てこない、ワインを頼んだのに料理が出てきてもサーブされない。隣のテーブルの客も、一組目は最後に出てきた料理を「遅すぎるからキャンセル!」と出て行ってしまいましたし、二組目はあまりに注文を取りに来ないのでしびれを切らして水を飲んだだけで帰ってしまいました。
一方食事も同様に今ひとつでした。一番有名なメニューが「ロブスターの生春巻き」ですが、一緒に巻かれている酸味の効いたゼリーと、皿に添えられている香辛料の効いたスパイスとでロブスターはどこかへ消えてしまいちょっと残念でした。ヌードルもどこか焦点がずれているようで、もう一度食べたいと思わせるものはありませんでした。唯一気に入ったのがジンジャーフライドライス。高菜?入りのもち米系フライドライスに半熟目玉焼きとかりかりに揚げたオニオンが載り、掟破りの醤油直がけ。日本人としては許せないのですがつい心を捉えられてしまいました。

ここはむしろ店内の雰囲気を楽しむ店でしょう。内装はZAGATでもベスト5にランクイン。特に地下は凝った作りのプライベートパーティースペースになっていて、利用はできなくとも一見の価値はあります。他にもミートソースやホワイトソースなど、素朴な味ながらバラエティに富んだパスタが用意されています。
Macelleria(マチェレリア)
48 Gansevoort St. (9th Ave南端) Tel: (212) 741-2555 http://macelleriarestaurant.com

うってかわってお勧めの店ですが、イタリアンのステーキハウスです。一番の名物はTボーンステーキですが、まずは前菜やパスタを注文。前菜はトマトのサラダと生ハムの盛り合わせなどが印象に残っています。トマトは大きく立派なトマトを丸ごと1つ輪切りにして、間に輪切りのたまねぎをはさみ、バルサミコの効いたイタリアンドレッシングをかけたものです。少々食べづらいですが、ここは思い切って最初にナイフで刻んでしまいましょう。トマトは大味ですが、たまねぎの辛味やドレッシングの酸味などを適度に中和してくれて楽しめる味です。パスタはトマトソースの手打ちガルガネッリに惹かれました。パスタのゆで具合もよく、ソースもトマトの酸味が引き立ってあっさりとしあがっており、本場に近い味でした。
そしてここまで食べておなかの具合を確認しながら、メインのTボーンステーキに挑戦します。運ばれてくるステーキは分厚いながらも火加減も良く外はかりかり、中はジューシーに焼き上げられています。普通のステーキハウスと違うのはフィレンツェ風にハーブとともに焼かれていること。複雑ながらもさわやかなハーブの香りがステーキの豊かな味わいを引き立てています。ステーキを食べるときひとつだけ注意点があります。陶器の皿なので気づきにくいのですが、この皿下手な鉄板より熱い温度に焼き上げられています。絶対に触らないように!かく言うわたしは初めて行ったときに店員の注意が聞き取れず、何の気なしに皿を動かそうとして本当にやけどをしました。せっかくのステーキもやけどの痛さでしばらく味がわからなかったほどです。
雰囲気もサービスもなかなかのもので、内装も飾るところがないながらスマートにお洒落な雰囲気にまとめています。MPDにしては客層も落ち着いていてどのようなグループで行っても浮いたりすることはありません。7時前にはがらがらですが、食事を終えて出る頃には入り口付近からバーカウンターまで人であふれていて圧倒されます。
Paradou(パラドゥー)
8 Little West 12th Street (9 Ave. との角近く) Tel: (212) 463-8345 http://www.paradounyc.com

くすんだ水色に塗られた木製のドアが2セット開け放たれただけの小さな入り口が、ひなびた南仏の田舎のレストランを思い起こさせます。掲げられた黄色の看板や、表に出された黒板、古い木製の椅子などが雰囲気を盛り上げます。入り口を覗くと2、3のテーブルと5人も座れば一杯になりそうなカウンターだけの小さな店に見えますが、奥には中庭が広がっていて、これを隣のバーとシェアしているので、夜遅くともなると田舎の酒場のような活気のある空間となっています。
ブランチのサンドイッチなどもおすすめのようですが、夜は前菜系がなかなかいい味を出しています。例えばハムとパテの3種盛り合わせ(5種類というのもある)。パテというとついモロッコ料理などを思い出しますが、フレンチのパテはきめが細かく繊細にまとめられていて、パンにつけて食べるといくらでも食べられてしまいます。フォアグラのテリーヌ。田舎風ながら風味は生かしながらもフォアグラを前面におしださず、あっさりと仕上げています。もちろんメインも素材を生かした素朴な味で、運がよければダックなども試せます。サイドディッシュのポテトグラタンもおいしかった。これらを平らげた後コーヒーでも頼めば気分は南仏かもしれません。
Gaslight(ガスライト)
400 W 14th St (9th Ave. between 13 & 14 St.) Tel: (212) 807-8444 http://www.gaslightnyc.com/
昼間は普通のスポーツバーに見えますが、夜になると店の周囲には赤いロープがめぐらされ、腕にタトゥーなどをした屈強なお兄さんが店に入ろうとする客をチェックしています。チェックをすると言っても写真付のIDつまり運転免許などで年齢のチェックをするだけです。彼らは機械的にチェックしているだけなので「顔を見れば年齢くらいわかるだろう」と言っても入れてくれることはないと思います。東京から来た連れはパスポートを見せて入っていました。
中に入ると特に奇をてらったようなバーではなく、アンティークの家具を基調とした内装が心地よい普通のバーです。カウンターはラフな格好をしたきれいなお姉さんが2人くらいで仕切り沢山の客をさばいています。一軒目を出て二軒目に行く前に一休みといったときに重宝しそうな店ですが、金曜の夜ともなると狭い店内に人、人、人。とにかくみんな立ったままおしゃべりをしています。スパイスマーケットのように気取った店と違って普通の人にも居心地がいいと思います。
5 Ninth(ファイブ・ナインス)
5 Ninth Ave. (Gansevoort St. とLittle W 12th の角) Tel: (212) 929-9460

この店もスパイス・マーケットと同じく、食事に入るよりは一杯やりに入るのがふさわしいアジアン・フュージョンのおしゃれな店です。正面は古いアパートのように赤レンガの壁に木枠の窓、そして建物の一角をツタが覆っています。中に入ると古い内装を生かしつつモダンなインテリアを組み合わせた洒落たスペースになっています。この店はきれいな女性を伴った男性が多い。私が入ったときも隣は両手に花状態の男性が、得意げに料理の説明をしていました。これを目の保養と考えるか、あるいはいけすかないと感じるか?そこが評価の分かれ目かもしれません。
私が行ったときはアサリのワイン蒸し、きゅうりのアジアソースサラダなどを頼みました。味は可もなく不可もなくという感じですが、量的なところを考えると食事をメインに入るにはちょっとコストパフォーマンスが悪いかなと思います。

Meatpacking District Map
◆MPDに関する情報はこちらで・・・ MEAT MARKET GUIDE(New York City Meat Market District) http://www.mmg-nyc.com
Brass Monkey(ブラス・モンキー)
55 Little W. 12th St. (Little W. 12th と11th Ave. の角) Tel: (212) 675-6686 http://www.brassmonkeybar.com

典型的なアメリカのスポーツバーです。MPDのはずれで、もともとこの界隈が精肉工場だけだったときからあるのでは?と思わせる、内容的にはごく普通のバーです。表には木のベンチが2つほど置かれ、大抵は2、3人のグループがビールを片手にくつろいでいます。サルがラッパを吹いている(実はラッパ飲みしている?)姿を描いた看板が軒先につるされているのが目印です。
普通、といいながらバーに入り奥のほうに進むと古い建物を生かした内装が落ち着いた居心地のいい雰囲気を醸し出しています。工場の換気孔を生かしたような天窓があり、日のあるうちに入ると柔らかな日が差し込んでマンハッタンとは思えないゆったりした時間を味わえます。カウンターには生ビールの注ぎ口がいくつも並んでおり、銘柄ごとに違った取っ手が客の気を引いています。どんなビールかわからなくても取っ手を指差して注文してしまいましょう。MPD散策に疲れたら一休みするのにお勧めのバーです。
Markt(マルクト)
9th Ave. と14 St. の角
MPDの入り口にあるベルギー料理の店です。MPDが今のような繁華街になる前からあったに違いない老舗のようなレストランです。実はベルギー料理がどのようなものか知らないのですが、このレストランの売りはシーフードとベルギービールです。私はある夏の日に店の外にぐるりと張り出したテラス席で食事をしました。観光客よろしくシーフードの盛り合わせを頼むと、デコレーションケーキのような形の高い台の上に大きな皿の載った料理が出てきました。皿の上にはロブスターやクラブ、生がき、生クラム、ムール貝などのシーフードがあふれんばかりに乗っています。行きかう通行人がみんな我々の皿を見ていく。我々はレストランの広告塔になったよう。ちょっと恥ずかしい思いをしながらシーフードを味わいました。シーフードはなかなかのもので、ロブスターもしっかりしているし、生のクラムも海の香りが漂っているようでした。
一方、ベルギービールは種類が多いことで有名で、この店でも数多くのビールを扱っています。片っ端から試してみるのも一興ですが、多少調べてから行くとより効率的に楽しめるかもしれません。いくら飲んでも種類が尽きることはないと思われるので、飲みすぎにはご注意ください。
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